四方山話

       


     

タイ・マレーシア フィットネス紀行/四方山話




ヘトヘトです 「バーン & スカルプト」

 「Burn & Sculpt」(バーン・アンド・スカルプト)というクラスを受けてみた。名前からだいたいの内容は想像ができた。簡単なエアロの有酸素運動とダンベルやチューブなどを用いた筋力トレーニングのクラスで、日本でも何回か受けたとこはある。
「有酸素運動と筋力トレーニング」の両方ができる反面、ガンガンに踊りを楽しめるわけではないし、重い負荷をかけて筋力をつけるクラスでもないので、どちらかというと「初心者向け」「女性向け」のクラスという感じは否めない。
水曜の夜8時半からのクラスで、スタジオに入ると数名の女性がステップ台とマットの用意をしていた。ほどなくインストラクターも入ってきた。女性であった。身長が165pくらいですらりとしていて、褐色の肌、身体のところどころにタトゥーが入っている。(タトゥーを入れる専門店は街中を歩いていると結構見かける。)
私が外国人だと分かったのか、英語で「このクラスは初めてですか?ステップ台とダンベルとマットを用意してください。最初の15分間はステップ台を使って有酸素運動をします。」との説明に「OK」と大きくうなずき、準備に取り掛かった。
ダンベルは4種類あり色分けされている。その中から一番重たいものを選んだ。何キロあるか定かではないが、日本で使用しているものと比べると明らかに一回り大きく、重たかった。それでも、5キロまではないように思われた。
参加者は15、16名ほどで、男性は私一人だけであったが、さほど気にはならなかった。「かなり初心者向けのクラスなんだな。楽勝だ!この手のクラスであればさほど辛い思いをすることはないだろう。せっかくバンコクまで来たのだからいろいろなクラスを楽しもう。」とレッスンの開始を待った。
最初の15分のステップ台を使ったエアロ(有酸素運動)は「ベーシックステップ」「キック」「二―アップ」などのベーシックなものを中心に、若干アレンジしたものを加えて8種類くらいの動きのコンビネーションであったが(手の動きはほとんどない)、ここバンコクでのエアロのレッスンは、日本と違って最初からコンビネーションを組んでくるので、15分と言う短い時間でも十分に楽しむことができた。
このくらいのレベルであれば十分についていける。「intro step」でのストレスも多少は解消することができたが、願わくば「intro step」のクラスもこれくらいのレベルであれば良いのだが…。
程良く汗が出てきたところでダンベルを手にした。インストラクタ―の「ショルダー」という合図とともに両手にダンベルを1つずつ持ち、ショルダープレスの体勢を取った。
ダンベルの動かし方は「シングル」「スロー」「スーパースロー」「ツー・ツー」などここタイでも変わらず、これぞ「バンコク共通」といったところである。
さて、肩の「ショルダープレス」から入った筋トレであるが、インストラクターの「ショルダー、アゲイン」という言葉とともに「サイドレイズ」「アップライトロー」「フロントレイズ」など肩のエクササイズが続いた。1つの動作の回数も多い。「エイトモアー」で8回単位の動作を繰り返す。
程なく肩に張りを覚えるようになってきた。「ウ、ウ、ウ、ヤバイな。この調子だと最後まで持たないかもしれない。」という不安が頭をよぎる。なるべく辛い表情は顔に出さないようにしてきたが、辛い表情を出さないとダンベルが持ち上がらないようになってきた。「オリャ」なのか「ウウウ」なのか「グウォォォ」なのかどのように表現したらよいのか分からないが、声を出さないとダンベルが持ち上げられない。「早く終わってくれー!」という願いもむなしく、間もなく「撃沈」。
「ゼィ、ゼィ、ゼィ…。こんなこと日本でもめったにないぞ!ダンベルの選択を間違ったか?」と「Intro step」でのいやな思いがよみがえってきた。
残念ながら、筋トレのレッスンは終始このような感じであった。レッスンを受けたスタジオの出入り口のある面は総ガラス張りとなっており、外から中の様子が丸見えである。スタジオの中からもマシンを使ってトレーニングしている人や見学に来た人がはっきりと分かる。不運にも私がステップ台を置いたのはその出入り口に面した場所。多くのギャラリーに苦しそうな表情をさらけ出す羽目になってしまった。
筋トレの「とどめ」は下半身であった。日本の場合であれば、通常「スクワット」が中心となるところだろうが、このクラスは違っていた。ステップ台に腰をかけ、一方の足の膝を伸ばし床と平行にした。そこから伸ばしている足の上下運動となった。ももの前(大腿四等筋)のトレーニングである。床と平行に維持するだけでも辛いのにそれを上下に動かさなければならない。何回もやらないうちに上下の動きはだんだんと小さくなっていき、止まってしまった。こうなると床と平行に維持するのはとても無理。すぐにかかとは床へと落ちていった。「撃沈」
となりの女性が私の辛そうな表情を見て「How are you?」とスタジオのみんなに聞こえるように声をかけてきた。「この表情を見れば分かるでしょう。Fineなわけがないでしょ!」と思いながらも、中学生のときに「How are you?と聞かれたらI'm fine, thank you. And you?と答えなければならない。」と習った日本の悪しき学校教育のおかげで「Of course, I'm fine.」と答えてやった。見栄を張って「Of course」をつけたが「And you?」をつける気力は残っていなかった。
足のエクササイズは続いた。今度は同じ体勢で、伸ばしている足を上下ではなく伸ばしていない足の向こう側へ持っていくものであったが、先ほどのエクササイズでももの前側と足の付け根パンパンになっていて感覚がほとんどない。全く足が動かない。何とか伸ばしている足の膝をもう一方の足の膝越えを試み、「オリャ!」「ヨッシャ!」「ウッシャ!」「ウォォォ!」と必死になってもがくのだが、膝と膝がぶつかって峠越えができない。
「すみませーん、もうこれ以上無理です。足が全く動ごきませーん。参りました!降参です!」と頭をうなだれ、両手の指をフロアにつき上半身を支えた。汗が髪の毛を伝わってフロアへポタポタと落ちていくのが分かった。そして、「ゼイ、ゼイ、ゼイ」という私の息遣いはしばらく落ち着くことはなかった。
筋トレの最後は「腹筋」のエクササイズ、それからストレッチでクールダウンをし、60分の「Burn & Sculpt」は終了した。
ヨレヨレになりながら自分の使っていたステップ台などを片付け、スタジオを出ようとしたところ、インストラクターが寄って来た。ウインクしながら右手の親指を立てて「Good work!」と大きな声をかけてくれた。

 


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