熊除けスプレーをホルダーに入れて腰にぶら提げ、「 突然の襲撃にも対処しないと… 」と部屋の中で早撃ち練習を数回繰り返し、「 さて、片付けるか…！」とスプレーにプラスチックのストッパーをかけようとした時のことである。

　「 プシュッー 」と勢いよく音がしたので「ん、今のは何の音だ？」と一瞬首をかしげたが、すぐに状況が理解できた。ストッパーをスプレーのレバーにかけようとしたときに誤って (incorrectly) レバーを押してしまったのである。「やべー、やっちまった！」と思わざるを得なかった。

　ただ、噴射時間 (injection time) は0.1秒から0.2秒ほどのほんの一瞬であった。最初は「どうしよう？」と焦ったが、特に身体にスプレーの内容物であるカプサイシン (capsaicin) の刺激 (stimulus) を感じることもなかったので「ほんの一瞬だったので何とか助かった…」と安堵していたのだが、そのような時間はほんの束の間であった。

　すぐにものすごい目の痛みととめどもなく出てくる咳で呼吸困難 (dyspnea) になり、たまらず屋外退避を強いられた。3〜4分も屋外に退避していると、咳も落ち着き目に痛みもかなりなくなったので、呼吸を止め、薄めを開けて意を決して再び部屋に入り、全ての窓を開けて換気扇を回して再び屋外に退避した。

　もちろん時間などは計っていなかったのでかなりあやふやなのだが、5分も外にいただろうか、目の痛みや咳もかなり落ち着いてきたので、恐る恐る部屋の中に入った次第である。